私は、これから数ページに渡り、楽譜と記号表記を用いて実際の音楽のサンプルを掲げ、リスボン・スタイルのポルトガル・ギターの奏法について述べます。
現代のポルトガル・ギターには二つのタイプがあります。その一つ、コインブラ(Coimbra)タイプのギターは、弦長470mmで、涙型か矛型の頭部デザインを持ち、他方のリスボン(Lisboa)ギターは、弦長440mmが通常で、カタツムリ型か渦巻き型の頭部デザインとなっています。
1997年、パウロ・ソアレス(Paulo Soares)は、コインブラ・ギター奏法を示すとても素晴らしい教本を出版致しました。相対するリスボン・スタイルの奏法を示す現代的な教本はございません。ここで私が示す短い奏法解説が、どなたか私以上に資質に恵まれた方の刺激となり、これに続く手引書を引き受けて頂けたら、と希望しています。
この写真は、私が所有している、アントニオ・ビクトール・ビエラ(Antonio Victor Viera 189 Rua Eugenio dos Santos, 191 Lisboa, Portugal) 1920年作のポルトガル・ギターです。 1970の数字の表示があります。2000年、自分自身で、この楽器に生じた6個の割れ目を修理し、フレンチ・ポリッシュによる仕上げを施しました。
1. リスボン・ギターは、弦2本一組の構成で、12弦6コースとなっています。
現代ポルトガル・ギターのリスボン調弦(調弦図)
ヘルムホルツ(helmholtz)表記法は、各音の実際のオクターブ位置を厳格に示しています。ヘルムホルツ表記法の”1a”は、一般には “A440”ピッチと示されます。 すなわち、ピアノでは中音域の”C”音の上、”A”音にあたり、スパニッシュ・ギターでは、第一弦の第5フレットの”A”音に相当致します。1
ポルトガル・ギターの調弦は、あなたが半音階対応(Chromatic)電子チューナーをお持ちならば、非常に間単に出来ます。先程の調弦図に従い、チューナーを頼りに調弦して下さい。 唯一気をつけなければならないのは、一オクターブ高すぎる調弦をしてしまう事です。それは、多分に弦を損ねてしまいます。
もし、“A”440Hzのチューニング・フォークを使うならば、最初に第3弦、第4弦、第10弦の音程を得ます。 そして、これらの弦との関係付けにより、残りの弦を調弦致します。 第1弦、第2弦、第8弦の音程を得るには、第3弦と第4弦(これは、第2コース弦あるいは、単に第2コースと言われます)の第2フレットを押さえて必要な音を得ます。 第7弦は第8弦より一オクターブ低く調弦します - これらの弦のオクターブの差を見つけるのは、さほど難しくはありません。 第10弦は第9弦より、単に、一オクターブ低くします。第6弦と第5弦は、第8弦の第5フレットに合わせます--- 通常ギタリストは、オクターブ差のある第7弦と第8弦である4コースの第5フレットをそのまま弾きます。第11弦と第12弦は“d”に合わせ、 一オクターブの差をつけますが、この“d”は第4コース(第7弦と第8弦)の第3フレットに合わせます。
一般にギターの調弦と言います時には、12弦それぞれの調弦というよりも6コースの調弦を意味します。 慣習として、演奏者は調弦を単に、D,A,B,E,A,G(第6弦から第1弦へ)と言います。標準表記法で、ただ各コースの一番低い音のみ示されます。