私どもは彼のインディアン・ローズウッドのフラメンコ・ギターを2台所有しています。何れも高い水準の出来栄えで彼の音作りにおける特徴が良く出ています。 音の立ち上がりの良さ、高音域の豊かな音色、よく響く低音域の倍音処理の素晴らしさ、各ポジション間のバランスの良さ、また音の分離がよいのでラスゲアード奏法においても各音が生きています。 パーカッシブな要素も十分。弦の間隔や弦高もよく計算されていますので、低音弦のミドルからハイ・ポジションの、開放弦を含んだコードも押さえやすくなっています。フレッチングもしっかりしています。
このブラジリアン・ローズウッドのギターは、パコ・デ・ルシアのために作ったギターの1本だそうです。 デボー氏はパコのために寝食を忘れギターを作った一時期があったそうで、この傑作はその内の1台でパコのギターの予備として長らくデボー氏の手許に管理されていたものです。 やはりこのギターを素晴らしい。製作者の高い技能と最高の材料が出会った時のみ可能なギターでしょう。 上に述べた特徴に加え、高度な演奏技術や表現力を持つ演奏者の意図にどこまでも応えてくれる楽器です。まさに名器です。弾き手を選ぶギターと言って良いでしょう。 |
デボー氏はフラメンコ・ギターのみならず、クラシック・ギターにもその才能を発揮しています。このギターは本体にブラジリアン・ローズ、表板にはセダーを使用。音量抜群。
ギターに求められる全てを備え、同じく優れた演奏家のもとで生きる名器です。
このギターは元来ペペ・ロメロ氏のために作られたそうで、何かの事情でやはりデボー氏のもとで長らく彼の私的コレクションとして管理されていたものです。
ギターのゴルペ板の下に"Dr.Pepe"、そして中ラベルに"For Pepe Romero"と表記されています。 このギターは彼のボストンの友人ロバート・ワード(Robert Ward)がCD録音やシンフォニー・オーケストラとの共演でコンサートに使われていました。 美しい音と外観でアメリカでは“伝説”の楽器となっていたそうです。 |
ノート
クラシック・ギターとフラメンコ・ギターの違いについて
サイズや内部構造の違いについては良く語られていますので、ここでは大変興味ある意見を紹介いたします。
“概略 ― 前世紀のスペインのギター製作者にとって、クラシック・ギターとフラメンコ・ギターの区別はなかった。
古いスペイン・ギターのあるラベルには"Guitarras Sevillanas"(セヴィリア・ギター)と"Guitarras de Concierto"(コンサート・ギター)の用語が使われていた。
このラベルが意味するのは、セヴィリアとコンサートの区分けは一般のギターと高価なギターの違いに対応させていた。
また、リチャード・ブルネ氏の議論を引用して、次の様に述べています。
現代のフラメンコ・ギターはこの20世紀のクラシック・ギターよりトーレスによって発展された19世紀のギターに近い、フラメンコ・ギターはクラシック・ギターから派生した特別のギターではなく、
その反対で、現代のクラシック・ギターこそ初期のフラメンコ・タイプのギターから派生したのだ、とフラメンコ・ギターの特徴である低い弦高、抑え目な音のサスティーン、
また打楽器的な荒々しさの一面など、ジャズやポピュラー音楽のスタイルに非常に受け入れやすい・・・・等“