ギター制作家レスター・デボー(Lester DeVoe)のギター |
レスター・デボー 2001年11月
ニュース・レターより
拝啓 我々がカリフォルニアに居を移した事は良い経験でした。この新しい地域と環境はますます自分の居場所として身になってきています。
我々はすでに1年と数ヶ月このセントラル・コーストに暮らしている事になります。ここでの一般的な天候状況は、朝靄があり、午後には日が射し、過ごし易いです。
そして、1週間に何日かは、夕べに靄がまた発生します。ここでは1年の内ほとんど天気予報を必要としません、と言いますのは、1日ごとが前日のように素晴らしい毎日だからです。
春と秋に雨季がありますが、夏には1滴も降りません。
ここNipomoは、昔ながらのRancho(スペイン語で田舎)ですが、今やそうしたローカルな雰囲気から典型的なカリフォルニアの町並みに早いテンポで変わってきています。
こうした大きな発展の中、新しい仕事場の建築を請け負う人を見つけるのに時間が掛かり、苦労しました。現在、ガレージの空気調整を施した場所でギターを作る一方、新しい仕事場の設計をしています。
しばらくすると、私は再度ヨーロッパへ木材を探しに行き、マドリッド(Madrid)ではまたパコ・デ・ルシアに会うことになっています。ただ今彼のために2本の新しいギターを完成しつつあります。
今回の旅では、もし娘のエレーヌ(Elaine)が、学校や水泳チームの練習のことが大丈夫ならば、もう一度彼女を連れて行こうと思います。私の従兄弟がドイツに住んでいまして、私の材料業者ともそれ程遠くないところですので、この機会に彼女と彼女の夫に再会したいと考えています。
また我々はスペイン南部をもう少し旅行し、今回セビリア(Sevilla)を訪れたいと思っています。
前回の旅行では、コルドバ(Cordoba)でビセンテ・アミーゴに会いました。以後、彼は私のギターを弾いてくれています。彼の一番最近のアルバム、"Ciudad delas Idea"(邦題:イデアの街)では私の"黒"のフラメンコ・ギターを弾いています。
このCDはラテン・グラミー賞の"ベスト・アルバム・オブ・ザ・イヤー"にノミネートされました(注:実際に賞を獲得しました)ビセンテが弾いているギターは、CDジャケットの内側の裏の写真に見られる、コルドバの狭い通りの壁を背にしているギターです。
このギターは、私の一般的な"黒"のギターで、裏/横板がインディアン・ローズウッド、表板ジャーマン・スプルース、バラの口輪飾り、アービン・スローン(Irving Sloane)の糸巻き、弦長655mmです。
次に、ニュース・レターでは初めてお伝えする私の大雑把な経歴の一部です。1970代に私はクラシック・ギターを習い始め、後にフラメンコ・ギターへ転向し、プロの演奏家になろうと熱望していました。
ギター教師(Mariano Cordoba)の1924年作サントス・エルナンデス(Santos Hernadnez)を弾く機会を得た思いで深いレッスンの後、私はそのサントス・エルナンデスと同じ音とその立ち上がりをもたらすギターを探しました。
しかし、このスタイルのギターはもはや作られていないと言う事実が明らかになりました。私自身の探求心とある引退した製作家のアドバイスのもと、我がギター教師のギターをコピーしたり、その製作家の友人の貴重な楽器のコレクションを研究したりして、自分の為にギターを一本作り始めました。
そして、若さのもたらす活気とこの新しいギターで、私は人前でギターを弾くようになり、良い評判を頂きました。が、それは、どちらかというと、私の演奏よりギターに向けられていました。
当時学校の教師として忙しく働いていたのですが、すぐに私のギターを求める声に気付き、もし実際の注文が無い時でも、私自身の為にギターを作り、時には評判のギタリストに販売するに至りました。
私は、あのサントス・エルナンデスの構成とイメージを確かなものとし、少し私自身のアイデアも試してみました。私がさらに推し進めたのは、フレッチング、弦のサドルでの音程調整、アーチ状の表板、全体的に余分な力が加わらない設計、内部のブレイシング(力木の配置)構造、ネックの補強、などで、私のギターを、音質と演奏性において個性的にしています。
私のフラメンコ・ギターのレコードとの最初の出会いは私の大学の図書室で見つけたサビーカス(Sabicas)の1枚のアルバムでした。調査資料や研究時間から多くの時間を割き、図書室の音響室で過ごすようになりました。
1970年代の始めには、彼は私の最も気に入ったギタリストとなり、毎年多くのコンサートを見ました。当時サビーカスが、後にグランド・コンサート・ホールで、私のギターを弾く事になるなんて、夢にも思いませんでした。
1981年、サビーカスはニューヨーク市のあるギター・ショップで私の楽器を見つけ、私に彼の要望に基づいたギター製作の依頼を手紙で伝えてきました。これは、私の経歴において与えられた多くの大きな幸運の内、最初の出来事でした。
サビーカスは私のギターを持ってスペインでのコンサートに出かけ、そこでパコ・デ・ルシアにそのギターを見せました。サビーカスは以後1990年に亡くなるまで私のギターを使ってくれて、最後のレコーディングは私が彼に1986年に製作したギターを使っています。
1990年代に入ると、パコ・デ・ルシアにギターを作り始めました。彼が私のギターを世界に紹介してくれたのは、カルロス・サウラ(Carlos Saura)監督の映画"フラメンコ"で、そこでパコが私のギターを弾いています。
これまで多くの忘れ得ぬ出来事があり、また多くの素晴らしいアーティストやギター研究者が長年私のギターを弾いてきてくれました。そうした皆さんに感謝の意を示すには1冊の本が必要でしょう。
ステージやレコーディングで私のギターを求めて下さる全てのアーティストの皆さんや、自分自身の満足として私のギターを楽しんで下さる全ての人々に心から感謝しています。
私にギターのカラー写真や値段等は、どうぞ私のサイトを参照ください:
http://www.devoeguitars.com/
現在お待ち頂いている方々には、出来るだけ早く製作にいたることを目指しています。
どうか御了承願います。
レスター・デボー
ノート
Lester DeVoe
680 Camino Roble
Nipomo,California 93444
USA
Fax/Phone: 805-931-0313
E-Mail: devoeguitars@gmail.com